町田市能ヶ谷にある「武相荘」は、白洲次郎さんとその妻、白洲正子さんの住んでいた家として、とても有名な観光地です。
その敷地内で営業しているのが
「武相荘レストラン」。
町田が誇る観光名所「武相荘」に、町田在住の私が行って来ました。
ここでは、スタッフさんに直接聞いた、レストランのメニューに関する逸話や、武相荘の見どころも交えながら、
ランチを食べた感想、敷地内の雰囲気などを詳しくレビューしていきます。
武相荘(ぶあいそう)へ行こう
第2次世界大戦後、GHQとの交渉役として活躍した白洲次郎、その夫人、正子さんが、1943年(昭和18年)に、終の住処として移り住んだ家が「旧白洲邸 武相荘」です。
「武相荘」の名前の由来とは?
「武蔵」と「相模」の境にあること、そして、白洲次郎の独特のユーモアで「無愛想」とかけて、名付けたそうです。
ここからは、武相荘レストランへと続く、「散策路」を歩いていきます。
案内図を見るとけっこう長い道のりみたい。
しばらく森の中のような小道が続きます。
季節がら、緑がたくさん茂っていて、気持ち良い!
途中、水の流れるような音がして、見るとどこからか引いてきた水が、勢いよく出ていました。
竹林のような所も。
菖蒲でしょうか? 鮮やかな紫色の花が群生しています。
水がめの中に小さな魚が泳いでいましたが、動きが早くて写真は取れませんでした(笑)。
横の階段を上がると右側に、受付・チケット売り場、ショップなどがありますが、今は閉鎖されているので、
お目当てのレストランがある左側へ。
門? の向こうにレストランやミュージアムがあるので行こうとしたら、
入り口にこんなものが。
郵便ポストがわりでしょうか?
そのまま門をくぐると、石畳に案内されるように、レストラン前へ。
武相荘レストラン、営業中です!
武相荘カレーのレビュー! 〜白洲次郎の意外な一面〜
入り口を1歩入ると、「いらっしゃいませ。」と店員さんの明るい声が。
付近の席に座ると、お冷やとメニューが運ばれてきました。
白洲家で食べられていたカレーだったという、メニューの紹介文に惹かれて、
「武相荘チキンカレー、野菜スープ付き」を注文。
白洲家のカレー
白洲家で食べられていたカレーは、元々は、正子さんのお兄さんが、シンガポールのご友人から教わってきて、正子さんのご実家で食べられていたもの。
そのカレーを食べた次郎さんが、レシピを書き写して持ち帰り、それ以来、白洲家の定番のカレーとなったようです。
お料理が来るまでの間、店内を観察します。
昭和っぽい雰囲気が、そこかしこに見られます。
コートハンガーにも趣があります。
柱に掛けられた時計は、
当時、次郎さんが実際使われていたものだそうです!
壁の高い場所に、次郎さんの肖像画が掛けられていました。その左横には、
夫人の正子さんの絵が。正子さんのお友達が描いてくれたそうです。
室内の雰囲気を壊さないためか、こんな工夫も。
「消化器」です!
そうこうしてる内に、チキンカレーが運ばれてきました。
銀色の食器もまた、昭和っぽくて良いですね。
店員さんが、
「こちらのキャベツの千切りには、味は付いてませんので、カレーをかけてお召し上がりください。」
と、声を掛けてくれました。
へぇ、ドレッシングが掛かってないなんて珍しいなぁ、
と思いながら、小さな器の中のピクルスにフォークを刺します。
パプリカ、ニンジン、きゅうり、それにセロリが、とても美味しく漬けられていました。
酸味がちょうど良く、さっぱりと食べられます。
野菜スープを飲んでみます。
甘い!
出汁は何だろう? と咄嗟に思いましたが、多分、使われている野菜の出汁だけかもしれません。とってもやさしい甘さです。
具材は、ニンジン、大根、しめじ、玉ねぎ、ベーコン、セロリ、でしょうか? 身体にとっても良さそう。
毎日飲みたい! と思えるおいしさでした。
次はカレーです。
白いご飯と千切りキャベツに、回しかけます。
サラリとしたルウで、さあっと白いご飯に黄金色のルウが染みわたって行く、そこをスプーンですくって食べてみました。
スパイスの辛みは勿論、野菜のまろやかな甘みも感じらりて、絶妙なバランスで美味しいです。
そして、カレーの掛かったキャベツを食します。
普段と違うキャベツの食べ方ですが、「カレー味のキャベツ」として美味しく食べられました。
ゴロっと入っているチキンがまた、柔らかくて、ほっぺたが落ちそうなくらい美味しい!
完食した後、店員さんがお皿を下げにきてくれて、ちょうど良いので、キャベツのことを聞いてみました。
「キャベツにカレーをかけるというのは、次郎さんの食べ方なんですか?」
店員さんが、答えてくれます。
「そうなんですよ。」
「実は、次郎さんは野菜が嫌いでまったく食べられなかったんです。
だから、お野菜を全部すりおろして、カレーに混ぜてるんですよ。」
「そうなんですか!」
「唯一食べられるのが、カレーをかけたキャベツの千切りだったと、娘さんからお聞きしてるので、このレストランでは、それを再現しているんです。」
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
なんと!
戦後の日本の方向性に影響を与え、外国と対等に交渉できた、あの白洲次郎さんが、野菜嫌いだったとは!
※ちなみに、キャベツに添えられていたプチトマトは色どりのためにレストランスタッフさんが加えているのだそうです。
そして、次郎さんは、カレーの食べ方にもこだわりが。
白洲次郎さんのこだわり
スプーンは、西洋ではあくまでもスープに使うもの。
「西洋食の延長として、カレーライスはフォークで食べるのが正統である」というのが彼の信条であったそう。
自分の考えを信じて貫くのは、彼の生き様にも通じる気がしますね。
店員さんが去り際に、お飲み物はいかがですか? と聞いてくれたので、食後のコーヒーと、本日のデザートを注文しました。
「良かったら、白洲家の食堂で召し上がりますか?」
と聞かれ、ハイ! と即答しました。
レストランから続く細い廊下を通って、「白洲家が食堂として使っていた」部屋へ。
ジャズっぽい音楽が流れています。
テーブルや椅子は当然、当時のものではありませんが、その時代の雰囲気というものは充分に伝わってきます。
そして、次郎さん愛用のビールジョッキが展示されていました!
渋いですねぇ。次郎さんに良くお似合いのジョッキです。
「牧山圭男 作」とあります。
牧山圭男さん
白洲夫妻の長女、牧山桂子さんのご主人で、趣味で作陶をしていらしたとか。現在の武相荘の館長さんです。
娘婿さんの手作りのジョッキを愛用してたんですね。
コーヒーとデザートが運ばれてきました。
デザートは、オレンジピールとレーズンの入ったパウンドケーキ。
フルーツと生クリームが添えられています。
格調高く、ナイフとフォークでいただきます。
ナイフをパウンドケーキに差し入れた時、
あれっ?
と思いました。
とてもぎっしり詰まっているのです!
密度が高いというか、でも重くなく、しっかりとしたケーキ、という感じ。
それでいて、とてもしっとりしてるので、ナイフですっとキレイに切れます。
甘すぎず、オレンジピールとレーズンが酸っぱさと甘さを感じさせてくれて、生クリームと一緒に口に入れると、美味しい。
このステキな部屋を独り占めしている満足感もあって、すごく優雅な時間でした。
部屋からテラス窓を超えて、デッキに出られるので、コーヒーを片手に外へ。
天気も良く、外の空気もおいしい。緑も生い茂っていて、目にも爽やかです。
コーヒーがいっそう美味しく感じられました。
上を見るとパーゴラが。
この枝は、雲南黄梅(うんなんおうばい)(別名: 黄梅もどき)という常緑の植物で、3月〜4月に黄色い花をつけるそうです。時期が過ぎていて見られなくて残念。
コーヒーも飲んで、部屋の中に戻りました。そろそろお会計を、と思い、ついにこの時がきた! と思いました。
「ここで会計しますので、これを鳴らしてください」と言われていたからです。
これ。
ガラスの呼び鈴!
大きなボタンを押してピンポーン、じゃないんです!
手に持って振るんです!
(貴族ですか笑?)
これで人を呼ぶなんて、人生初、です!! (ちょっとドキドキ)
…………リンリーン。
……とっても涼やかな、音色でした。
ご馳走様でした。
多彩な「武相荘」の魅力
敷地内には、白洲夫妻の歴史を展示してある
- ミュージアム
- 「Bar & gallery “Play Fast”」
- カフェ
も併設されています。
今回、ミュージアムは見てないのですが、次回はぜひ立ち寄ってみたいです。
(入場料¥1100(税込)が必要です)
レストランを出て、すぐ隣にある階段を登ると、「Bar & gallery」の部屋があります。
室内は「Bar」の雰囲気です。
夫妻の若き日の写真が。
他には、ゴルフ好きの次郎さんの作った「Play Fast」の文字が入ったTシャツの展示がありました。
「Play Fast」=「早くやろうぜ」の意味ですが、ゴルフだけでなく、
「周りの人たちの為にも、余計な時間は省いてスムーズに事を進める」
という次郎さんの気遣いの言葉でもあったようです。
この部屋の名前もそこから付けられたのですね。
1947年、終戦連絡中央事務局次長を辞める時に、次郎さんがマッカーサーに贈った椅子のレプリカの展示などもあります。
一通り見たので、一旦外に出ようと階段を降りると、
「Bar & gallery “Play Fast”」の下は、倉庫のようになっていて、
時代を感じさせる道具がいくつも置いてありました。
そして、最後は「カフェ」へ。
壁がなくて風通しが良いです。
今は、レストランで注文した飲み物とデザートだけ、ここで食べられるそうです。
また、カフェの一角には、白洲次郎さんの愛車と同型の「ペイジ」が展示されています。
この展示車は、2008年放映のNHKドラマスペシャル「白洲次郎」で使用されたものだそうです。
「武相荘レストラン」のおすすめポイント
- 白洲家のカレーが食べられる(次郎さんの好きだった親子丼もあります)
- 当時の面影の残る空間に浸れる
- 白洲次郎夫妻の歴史が感じられる
- その時代のインテリア、小物が楽しめる
日本の歴史の1ページに刻まれた、白洲次郎の生き様が垣間見れる
武相荘レストラン。
ぜひ、一度体感してみてください!